洋書を読む読書会

オンラインで読書会をしています

ミノタウロスの皿、あるいは漫画を読む読書会"未"開催記・前編

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すっかり暖かくなりましたね~。
これはつまり、まだ寒かった頃に更新した前回記事からしばらく放置しているということであります。

これは別にさぼっていたんじゃなくて、いつもの洋書の読書会とは別のメンバーで「漫画を読む読書会」をしようともろもろ準備していたからであります。 

しようとしていた…とまだるっこしい言い方をしたのは、諸般の事情により開催を延期したからであります。 

まだ開催していないのになぜ記事を書くのかというと、このまま放っておけばせっかく読んだ課題図書の内容を忘れるのが容易に予想されるため今のうちにメモを残しておきたいから、であります。 

記事にするからには、読んだ漫画だけでなく今回の読書会をどのように準備したかについても記録したいと思います。であります。

 

1.本の選定

いつもの洋書の読書会では、課題図書は定めず、各自が最近読んだ洋書やネットの記事などを持ち寄って自由に雑談しています。

こういうやり方を採用しているのは、洋書を読むのは時間がかかるため全員が課題図書を期日までに読破してくるのはハードルが高いとの理由からです。

もちろんこれでも楽しいんですが、読書会というと、同じ本を全員があらかじめ読んできて当日はその内容についてじっくり話し合う…というスタイルの方が一般的かもしれません。っていう話は過去のエントリでも何回も書いているんですが(コレとか)

 

さて、今回やろうとしていたのは漫画を読む読書会です。

漫画なら洋書よりもずっとハードルが低いはず。
これは、普段やらないスタイルの読書会をするチャンスでは?

そう考えて課題図書を選ぶことにしたんですが、いざ選ぶとなるとなかなか難しいもんですね。

 

まず、簡単に手に入る漫画じゃないといけません。
電子書籍なら選択肢が広がるんですが、みんなが電子書籍に馴染んでるわけでもない。
それに入手自体は容易でも割高だと二の足を踏んじゃいます。
漫画の場合だと長期連載のため何冊も買わなければいけない作品もあるわけですし。

 

そして、ジャンルとか作風面での絞り込み。
漫画って少年漫画や少女漫画というようにジャンル分けがくっきりしていて、このジャンルは苦手っていう人もいるかもしれない。
あと、あんまりポピュラーすぎるのはみんな敢えて読書会したいとは思わないだろうし(ドラゴンボールとか(いやそれはそれで楽しいか))
かといって趣味に走ってマニアックな選択をしてしまえばどう考えても失敗するし。

 

そんなふうにいろいろ考えた末、以下の条件で選ぶことにしました。

・有名どころの作家の作品で簡単に手に入り
・でも適度にマイナーでこういう機会がないと読まなそうな
・1巻完結あるいは短編集

これらの条件を満たす本ということで、最終的に藤子F不二雄の異色短編集(小学館漫画文庫)第1巻「ミノタウロスの皿」に決めました。

 

2.読書会の進め方

ドラえもんをはじめ誰でも読んだことがある藤子F不二雄。

課題図書を絞っておきながらアレですが、この1冊だけで読書会を完結させるのももったいないので、前半と後半の2部に分けて進行したいと考えました。

 

前半は、この本のどのエピソードが気に入ったかを順番に発言。
後半はこの本に限定せず、人それぞれに思い出があるF作品全般を対象にして雑談。
前半後半それぞれ30分ずつの全体1時間程度を目安に。

 

こんな具合に提案したところ「いや、藤子不二雄とかあんまり知らん」と言われてしまいました。

え?F作品なんて家庭に数冊はあるもんじゃないの?
小学館コロコロ文庫の「ドラえもん0点・家出編」とか情操教育のため全家庭に常備されてるでしょ!?
中学生くらいになったら「T・Pぼん」で歴史の勉強したよね?!

そう、我が家だけでしたか…

読書会の準備をしていただけなのに、思いがけず我が家の生育環境と世間一般とのズレがあぶり出されてしまいました。

 

準備のお話だけで長くなっちゃったので漫画の感想は次の記事にて。

5回目の結果(KARAMO, Nudging for Tax Compliance:A Meta-Anlysis, My Father’s Dragon)

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第5回の概要

 

日時 日本時間で2/2(火)夜
場所 LINEを使ってオンライン開催
参加者 3名

 

2021年最初の読書会、通算で5回目となりました。
参加者、開催時間、開催方法などは第3回第4回と同じです。(マンネリ?安定?)
今回それぞれの参加者が持ち寄ったのは自伝に論文に児童書と、いい具合にジャンルがばらばらでした。
それではさっそく、当日しゃべった順番に内容をまとめていきます。

 

☆☆☆

 

1.私の持参本 KARAMO(写真上)

①本の概要

ネットフリックスのリアリティショー「クィア・アイ」出演者のカラモ・ブラウンの自伝。
ファブ5(それぞれの得意分野で毎回のゲストを魅力的に変える5人のゲイ)の一人、カルチャー担当のカラモ。
彼がクィア・アイに出演するまでの半生を語る。

 

②やりとり

私)自分の本棚を見るとマジョリティの作者による本ばかりだった
具体的には
・女性よりも男性が圧倒的に多い。ましてLGBTQの作者は見あたらない
・作者の国籍も日本がほとんど。外国人作者はいても欧米ばかりでアジアやアフリカの作者による本がほぼ無い
ということで、普段だったら選ばないようなマイノリティの作者による本を選んだ

私)この人には、カトリック信者でありながらゲイで、黒人で、ジャマイカ系移民、という複合的なマイノリティ属性があり、日本社会でマジョリティに属する自分からは想像しにくい苦しみがあるんだろうなと思う 

私)このたびアメリカ大統領がトランプからバイデンに代わったわけだけど、トランプ時代はLGBTQへの風当たりは強かったのかな
A)トランプ大統領だからというか、その前からずっと共和党の州では生きづらそうだった
私のアメリカ時代の友達もLGBTQの人は多かったが今ではみんな民主党の州に住んでいる
中西部の保守的な州に生まれた友人などは、お母さんがカトリックなので親元にいた当時は親を安心させるために無理してガールフレンドを作ったりしたそうだ

A)私が通っていた大学は芸術系のところだから、男子学生は誇張ぬきに10人中7,8人がLGBTQって感覚だった
Y)マイノリティの方が日本人と仲良くしてくれるのかなって感覚はある
社会の王道を行くマジョリティの人たちは移民と仲良くする必要がないというか

 私)ドラッグ依存に苦しんだエピソードも出てくるが、タバコも吸わない健全な(?)日本人としてはあまりピンと来なかった
実際アメリカでは普通に蔓延してるの?
Y)私はこの年齢になってからアメリカに来たから周りでそういう話は聞かないけど、大学生とかすごくやっていそう
A)それは本当で、学生だとめちゃくちゃドラッグをやっている
私自身はぜんぜんやらなかったけど、煙草でいう受動喫煙みたいな状況には何回も遭遇して、マリファナなら匂いで分かる
ただ周りも無理には勧めては来ないけど
ニューヨークでシェアハウスを探したときも「私達みんな吸うけど大丈夫?」とか普通に聞かれた

 

2.Aさんの紹介論文 Nudging for Tax Compliance:A Meta-Anlysis(写真左下)

①本の概要

ドイツのミュンヘンにある経済研究所が出した論文。
45の研究成果(延べ約1,000回の実験結果)をもとに、国や地方自治体が税の徴収率を上げるための効果的な方法について統計的にまとめている。
最近、行動経済学の分野で、デザインなどを工夫することで消費者の行動を望ましい方向に誘導する「ナッジ」という言葉が流行っているが、この論文は、ナッジの観点から納税者に固定資産税をいかに自主的に払わせるかの実験結果を分析したもの。
どんな督促状を送ると効果的か、例えば「周りの人はみんな払ってますよ」という文面にすると効果があるか、などの分析をしている。

 

②やりとり

 A)職場の有志の勉強会で使うためにいま読んでいる
イギリスってナッジの分析の分野では先進的で、政府の研究機関が色んな論文を読めるポータルサイトを作っている
日本語ではそういった情報がないから英語で情報収集しないといけない
でも結局はグーグル翻訳に頼っている
昔より優秀になって、日本語としてかなり読めるようになった
Y)論文を読むときのグーグル翻訳の一番いい使い方は、まず翻訳させて分かりにくいところだけ自分で読むことだと思う
論文って一言一句読むものじゃなくて情報を取るものだから、その方が効率がいい
アメリカ人も同じで、こっちの弁護士も日本側の弁護士が書いてきた日本語をグーグル翻訳して「これで意味は合ってるか」って私に聞いてくる

Y)上の世代の人はそれが無い時代でやってきたから高いレベルに達していて、それはすごいことなんだけど、グーグル翻訳を使えばその時間を別のことに使えるのはありがたい

Y)英語だと斜め読みができないんですよね
読んでるようで読めてない
A)日本語だと漢字かな混じりだから漢字のイメージで覚えるのかも

 

3.Aさんの持参本 My Father’s Dragon(写真右下)

①本の概要

日本では「エルマーのぼうけん」のタイトルで知られる児童文学。
著作権が更新されていないため、こちらのサイトで挿絵も含めて無料で読めるそうです。

https://digital.library.upenn.edu/women/gannett/dragon/dragon.html

 

②やりとり

Y) Aさんが紹介したような論文とはまったく逆で、子ども向けの本って一つ一つの文章が欠けると分からなくなるくらい展開が詰まっている
無駄がなくて読んだ満足感がある
論文だけじゃなく文学作品にもそういうところがあって、無くても本筋に影響はない情景描写が付きもの
そういうのに限って語彙が難しい(笑)
A)論文でもアブストラクトだけ読めば取りあえず結論は分かるんだけど
論文って書き方のルールがあるから結論だけ書くわけにはいかない

Y)物語の終盤で、主人公がワニの背中を渡って川を横断しようとするところに他の動物たちが追ってくるシーンがあるんだけど、すごく臨場感がある
「ここで彼がこんな行動を取っている瞬間、あちらではこんなことが…」という状況をスムーズに説明する文章で、身近な表現として勉強になる
ただ、児童書なので、出てくる語彙が動物の名前とかで一般に使うような単語じゃない
児童書は多読にふさわしくないという意見も分かる

  

☆☆☆

 

だいぶ省略しましたが2021年最初の読書会はこんな感じでした。

オンライン開催に変更してから早4回、メンバーも進行方法も固定化してきているので次回は少しやり方を変えようかと思っています。
まだ具体的には決まっていないですが、洋画など英語の動画をあらかじめ見ておいて、当日はそれを題材にトークを展開するようなことを考えています。

(本当のところを言いますと、マンネリを避けるっていうのも変えたい理由の一つではありますが、最大の理由はみんな読んだ本のストックが尽きてきたからです。笑)

4回目の結果(My Little Sister Can Read Kanji, Acacia, Satoru Iwata - Heart of a Gamer, Japanese "New Word of the Year”)

f:id:nobirunoji:20201223185854j:plain第4回の概要

 

日時 日本時間で12/18(金)夜
場所 LINEを使ってオンライン開催
参加者 3名

 

早いもので今回が2020年最後の読書会でした。
参加者、開催時間、開催方法などは前回と同じです。
前回がなんだか社会派な内容になってしまったので、今回はみんな軽い題材を選んできました。
バランスだいじだよね。あと年末で忙しいですもんね。ということでまとめも短めにいきまーす。

 

☆☆☆

 

1.私の持参本 My little sister can read kanji(写真左)

①本の概要

表紙からお察しのとおり、日本のラノベの英訳です。
原題は「僕の妹は漢字が読める
「萌え」が文化の主流となり、文学賞には美少女モノ小説がずらっとノミネートされ、公用語からは漢字すら廃止された23世紀の日本。
漢字の読めない典型的な現代人の主人公と、事情により漢字が読めるその妹、その他の登場人物たちが21世紀の平成の日本にタイムスリップしてしまい…

 

②やりとり

私:23世紀の最先端を行く小説として引用される作中作の日本語が頭おかしいwwwと出版当時ネット上で話題になったのを覚えていたので、それがどう英語に訳されているのか気になって読んだ
Y:漢字が無い日本語って、英語ではどう訳されているの?
私:全て大文字。小文字がない(笑)
漢字が書けない日本人っていうのは、英語話者に置き換えると小文字が書けない人ってことになるのだろうか

 私:最近は英語圏でも筆記体を使わないと聞いたことがある
それが本当なら「筆記体が書けない」の方が「漢字が書けない」に近い気がする
じっさいアメリカではどう?
Y:職場でメッセージカードを交換すると、ほかのアメリカ人は筆記体で書いてる
自分だけブロック体で書いてるんだけど、どう思われているんだろう…
A:自分がアメリカで大学生をしてたころは、まわりで筆記体を書く人はいなかった
Y:世代によるのかな?職場の人たちは50代とかだから書ける世代なのかも

私:このラノベ、最後までスムーズに読めたけど意外と英語の勉強にはならなかった
日本の漫画やアニメによくありそうな会話が多いので、単語が分からなかったり構文が取れなくてもなんとなくの雰囲気で読めてしまう
言い換えると、英文を読んでいるにもかかわらず日本のコンテンツという匂いが強烈に感じられた
反対に、最近ニンテンドースイッチポケモンを英語に設定してやっているんだけど、不思議と日本のコンテンツを英訳したものという感覚がない
これはアメリカ製のゲームですよーって言われてもまったく違和感がない
世界展開する前提で作られているゲームだから当たり前なんだけど

 私:その作品が楽しめるかどうかは、それが誰に向けて作られているかというのが大事で、使用されている言語はそこまで関係ないのかも
このラノベはオタクネタが分かる人にだけ分かればいいんですよというスタンスで書かれていて、だから知らない英単語が出てきても自分は面白がれたけど、逆に英語ネイティブでも日本の漫画やアニメに親しんでいないと意味は分かっても理解はできないかもしれない
Y:なんとなく分かる
日本の新聞を読んでいまの日本の出来事を知ろうとしても、日本でいまどういうことが起こっているかという前提が分かっていないからあまり頭に入ってこない
私:ただ、そうやって読者を絞るのは悪いことばかりでもない
だからこそ分かる人には深く楽しめるという側面もあって、それが長く続くと古典とか伝統とかいうものになるのかもしれないね

 

2.Yさんの紹介動画

【Official】Pokémon Special Music Video 「GOTCHA!」 | BUMP OF CHICKEN - Acacia - YouTube

Satoru Iwata - Heart of a Gamer - YouTube

 ①動画の概要
(1本目、写真右上)
バンプオブチキンの新曲「Acacia」とポケモンがコラボしたミュージックビデオ。
歌詞は日本語だがYouTubeにて9言語の字幕翻訳付きで公開されている。
(2本目、写真なし)
当時の任天堂の社長、故・岩田聡氏による、2005年のGame Developers Choice Awards でのスピーチ。

 

②やりとり

 Y:長年のバンプのファンなので選んだ
日本語の歌詞と英語の翻訳を見比べると、こういうことは翻訳で表現できないんだなって感じられる箇所がある
例えば「君の命が揺れるとき」が through good times or bad って軽い感じに訳されているところとか
でも「こういう風に始まったんだよ」が that’s how this all began って訳されているのは英語の方がいいじゃん!ってなった

 Y:歌詞も作品の大事なところだから、歌手って翻訳されるのを嫌うのかなと思っていた
少なくともバンプはこれまでそういうのとは距離を置いていたんだけど、それを今回は受け入れたんだというのが長年のファンとして感慨深い(笑)

 Y:ミュージックビデオだけだと短いので、任天堂の社長だった故・岩田氏のスピーチも合わせて紹介します
日本人でもスティーブ・ジョブズと同じくらいスピーチできる人がいるんだということで
私: 発音が日本人っぽいので聞きやすいと思って聞いていたが意外とそうでもなかった
一つ一つの単語は分かるんだけどなぜか文章としては頭に入ってこない
長いスピーチだから集中力が続かなかったというのもあるけど(笑)
Y:英語には英語のリズム感というのがあるから、それに乗っていないスピーチだとかえって聞き取りづらいかもしれないね

 

3.Aさんの紹介記事

 

soranews24.com

 ①記事の概要
 「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2020』」についての記事。
ソーシャルディスタンスやステイホームを差し置いて選ばれた「ぴえん」のことが紹介されている。

 

②やりとり 

A:ニュースアプリの「スマートニュース」で見つけた
このアプリはページをカスタムできるんだけど、英字新聞のニュースも選べるのでジャパンタイムスの英語記事を登録している
Y:日常的に読んでるんですね、すごい
A:この読書会もそうだけど、英語に触れていないと忘れちゃうので
この前上司との面談で「読書会で英語の勉強してます」って言ったら褒められました (´∀`)
Y:面談といえば、私の家族も職場で人事の面談があったんだけど、まだ日本に帰れないと言われたらしい
日本が恋しくて最近は日本に帰ったら行きたい旅館をネットで調べてる
「和」な旅館に泊まりたいな~
懐石料理が食べたい
A:いろいろおすすめのところがあるのでまた教えますね!

 

☆☆☆

 

はい、ということで2020年は読書会を4回やりました。
途中からオンライン開催に切り替えたけど、意外と問題なく進行できますね。
日程調整も難しくないし。

Yさんがまだしばらくアメリカに留まるとのことなので、当分オンラインが続きます。
日本が恋しいYさんのために、ええ感じのお宿があれば教えてください。

読書メモ:チーズとうじ虫(洋書も読書会も関係ないエントリ)

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洋書ではないんですが、先日読んだ本を要約する機会がありました。
せっかくがんばって書いたのでこのブログにも記録しておこうと思います。
なお、読んだ本は図書館に返してしまったので細かいところはうろ覚えで書いています。
内容に誤りがあったらすみません。

※2021年6月追記
みすず書房が復刊してくれたのでさっそく買いました(画像)

 

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チーズとうじ虫(カルロ・ギンズブルグ 著、杉山 光信 訳、みすず書房


1.まえがき

これまでの歴史研究は権力者の立場から記述するものばかりで庶民の視点に立っての研究は少ない。
そのため、本書では、16世紀のイタリアの異端審問という埋もれた記録を丹念に読み込み、当時の庶民が置かれた文化的状況を復元。
歴史を微視的に読み解く(=ミクロストリア)ことをめざす。

2.本編

イタリア東北部フリウリ地方の粉挽き屋ドメニコ・スカンデッラ(通称メノッキオ)はキリスト教の異端説を村で吹聴した疑いで16世紀後半に異端審問にかけられた。

メノッキオの異端説はあまりに独特なものであった。
いわく、世界はカオスであった。
そのカオスがやがて凝固し、牛乳が固まってチーズになるように今の世界が生まれ、そしてチーズからうじ虫が湧くように、天使たちが現れた。

このように考えるメノッキオからすれば、カトリック教会による神、世界、魂に関する解釈は間違っているし、独善的だ。
ユダヤ教徒イスラム教徒も同じ神を彼らの方法で信仰しており、どの宗徒も神は救ってくださるだろう。
カトリック教会が彼らのやり方を信徒に押し付けるのは、しょせん彼らの商売にすぎない。

かくも独特の異端説ではあるが、同時代の別の地方の異端審問記録を調べると、全く関わりの無いはずの別の庶民が唱えた異端説にも共通の要素が伺える。
チーズとうじ虫のような奇抜な例えは無いが)

なぜ一庶民に過ぎないメノッキオはこのような異端説を着想できたのか?
なぜイタリア国内の複数の地方で同じような異端説が生まれたのか

その背景には活版印刷術の普及がある。
活版印刷により、庶民でも書物を入手することができるようになった。
事実、異端審問の記録によると、メノッキオは俗語訳聖書、デカメロン、コーランのイタリア語訳と思われるもの、創作交じりの世界旅行記どを読んでいた。

メノッキオが読んだ書物をひもとき、どの文章がメノッキオに引用されたか、メノッキオがそれらをどのように消化したかを緻密に分析する辺りはミクロストリアの第一人者たる著者の面目躍如といったところ。

また、書物だけでなく、当時のイタリア社会の人的交流もメノッキオらに影響を与えた。
メノッキオが粉を挽く水車には多くの人が行き来し、その中には貴族のサロンに出入りする(庶民としては比較的に)知識のある層もいた。

当時はルターの宗教改革が始まった頃であり、イタリア貴族の中でカトリックに対して懐疑的な人々が生まれつつあった。
そのような貴族や知識層がサロンに集まり話し合った内容も当時の資料から知ることができるが、著者の分析によれば、ここにもメノッキオの異端説との共通点が見つかる。
恐らく、水車に出入りする知識層から仕入れた最新のカトリック巡る議論もメノッキオに影響を与えたのだろう。

しかし、メノッキオが異端として処刑されたのも、この宗教改革せいであった。
以前なら庶民の異端説など相手にしなかった教会も、カトリックを脅かす改革勢力を恐れて、どこからそのような異端説を聞いたのか知るためメノッキオを拷問にかけ、口を割らないメノッキオに対して最後には火刑が宣告されたのである。

3.感想
三位一体、四元素などキリスト教の知識がないと内容を十分に理解するのは困難。
とはいえ、メノッキオの考えのユニークさや、異端審問にかけられているのにノリノリで審問官に自説を語るあたりはコメディのような可笑しさがあり楽しめる。

しかし本書を魅力的にしている最大の要因は、名もなき庶民たちに寄り添って、ミクロな目線から当時の社会を再現しようとするギンズブルグの温かい姿勢ではないだろうか。

もともとギンズブルグは、当時イタリアに広く見られた「ベナンンティ」という民間の異端信仰を調べており、そこからメノッキオの記録を見つけて本書が生まれるきっかけとなった、らしい。

異端信仰といってもそれはあくまでキリスト教から見ての異端。
キリスト教がヨーロッパ各地に存在した豊かな民間信仰をいかに抑圧していったか…
ということで、なんとなく手塚治虫火の鳥 太陽編」を思い出した。
(あれも、日本への仏教伝来を、権威ある宗教が土着のアニミズムを脅かす出来事として描いていた。)

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とまぁこんな感じでした。
最初は簡単に要約するだけのつもりだったのが、いざ手を付けるとどんどん膨らんでいって意外に時間がかかりました。
でもきちんとアウトプットしようとするのはいい訓練になりますね。
今後このエントリがシリーズ化していくかは不明…

 

3回目の結果(The Life-Changing Magic Of Tidying, Becoming RBG, Becoming)

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第3回の概要

日時 日本時間で10/23(金)夜
場所 LINEを使ってオンライン開催
参加者 3名

 

読書会3回目、オンライン開催では2回目となる今回。

参加者は以下の3名でした。

・私

・Aさん(3回連続参加。ありがとう!)

・Yさん(前回に続き2回目の参加)

オンライン開催にあたって事前に準備したことなどは前回と同様なのでサクッと省略。
さっそく本編に入りまーす。

 

☆☆☆

 

1.私の持参本「The Life-Changing Magic Of Tidying」(写真左下)

①本の概要

こんまりこと近藤麻理恵氏の「人生がときめく片づけの魔法 」の英訳。のオーディオブック。
有名な本なので紹介は不要かもしれませんが改めて説明すると片づけの本です(まんまやがな)。
とはいっても片づけのテクニックやノウハウというよりは心構えを説いた本でして、「部屋が片付かないのは要らないものが多すぎるから不要なものは捨てましょう。要否の判断基準はあなたの心がときめくかときめかないか。あなたの心をときめかすものだけに囲まれて暮らしましょう。」というのがテーマ。のはず。
これが英語をはじめさまざまな言語に翻訳されて世界中でベストセラーになっているらしい。
スパークジョイ!

②やりとり

Y)ネットフリックスのこんまりの番組が世界中でウケている
TIME誌でも「影響力のある100人」に選ばれた
最近はアメリカ国内でこんまり式の片付けコンサルタントを育成している
あとは自分のオンラインショップを開設してオリジナル商品も売り始めた
家が片付いたから空いたスペースにその商品を飾ってねということかな(笑)

A)こんまりがアメリカで受けているのは家が広いからかも
アメリカでは田舎の一軒家は大きいし地下室もある
ちなみに私が住んでいたミズーリ州は田舎なんだけど治安が悪い州と言われていた
歩く通りを一本間違えると治安がやばい
Y)通りによって治安が違うのは私が今いるフィラデルフィアも同じ
最近ホームレスが増えて昼間も危険
コロナでホームレスが増えたのか、コロナで人通りが減ったから目立つようになったのか…

Y)この本では片付けがTidyingと訳されているが、ネイティブにorganizingの方が近いよって言われた
A)Organizingだと整理整頓って感じなのかな

Y)オーディオブックで聞いて理解できるってすごいね
私)いや、リスニング全然できないから
家にあった日本のオリジナル版と読み比べながら聞いただけ
Y)英訳はオリジナル版を改変したりせず完全に訳している?
私)お守りなどのスピリチュアルグッズをどう整理するかの箇所が飛ばされている
宗教的にナイーブな部分として翻訳の際にカットされたのかも
Y)確かにネットフリックスの番組で「家の中の物を叩き起こす」ために柏手を打っていたり、神社に頻繁に行くと言っていたり、ご本人は宗教熱心なところがあるみたい
私)そういえば先日こんまりを読んでいると言ったら「あースピリチュアルっぽい本ね」と言われた
著者本人にそういう好みがあるとはいえ本の内容的には宗教色がほとんど無いのにそんなリアクションをされてびっくりした
あと別の雑談で最近マインドフルネスが流行っているという話題になったときにも「なんか宗教っぽいやつでしょ」と言われてこれまたびっくりした
むしろ自分の中ではマインドフルネスって座禅から仏教色を抜いてビジネスパーソン向けに敷居を低くしたものという印象だったんだけど
そんな風に宗教とかスピリチュアルっぽいものに拒絶反応やレッテル貼りをする傾向が世間にある一方で、寺社仏閣への旅行が人気で御朱印も流行っていたりと本来とても宗教的な行為を無邪気に楽しむところもある
その辺のアンバランスさというか無頓着さみたいなものを感じてしまった
A)私も大安とか一回も気にしたことなかったのに入籍の時は気にしちゃった
親に言われたからというのもあるけど

 

2.Yさん持参本「Becoming RBG」(写真左上および右上)
Aさん持参本「Becoming」(写真右下)

①本の概要

「Becoming RBG」は今年9月に87歳で亡くなったアメリ最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ(RBG)の伝記。
マンガ形式で読みやすい。

「Becoming」は前回Yさんが紹介したのと同じだがこちらはオーディオブック版。
Aさんが読書の習慣をつけるために買ったとのこと。
紙でも分厚いがオーディオブックにすると17時間あるらしい…


②やりとり

(2冊ありますが、いずれも現在進行形のアメリカ大統領選と深いつながりをもつ本ということで、RBGを中心にまとめて話をしました。)

Y)ドキュメンタリー映画「RBG 最強の85歳」を見て興味を持った
映画とほぼ同じ内容で挑戦しやすいかなと思って読んだ
この人はハーバード大学コロンビア大学を優秀な成績で卒業するものの女性というだけで就職できなかったことがあり、その後弁護士になって性差別と戦ってきた
最高裁判事になってからも力強い反対意見を書くリベラル派として有名に
そういう人だからアメリカでは若者からも人気がある
日本人の若者が最高裁の裁判官を知っているとか無いけど

Y)アメリカの最高裁判事はいま9人
その時の大統領が選んだ候補を上院が過半数で承認して決まる
なので必然的に大統領と上院が民主党共和党かで判事の傾向が決まる
例えば共和党キリスト教保守派なので人工中絶に反対、民主党は認めるという価値観が反映される
RBGの場合は女性の権利を獲得することで有名になった人物なのでバリバリのリベラル
その後任としてトランプが指名しているエイミー・バレットは当然だけど保守派

A)トランプがコロナにかかったのもこのバレットさんを紹介する場じゃなかったっけ
Y)そう、ホワイトハウスの敷地内で開かれたお披露目式典がクラスターになった

Y)大統領選前のこの時期にトランプが病死しなくてよかった
もし亡くなっていたらアメリカ中混乱するところだった
私)高齢だから日本国内でも心配されていたけどね
高齢と言えば、トランプもそうだけどRBGも87歳で亡くなる直前まで判事として現役だった
日本の菅首相も70代で高齢
日本もアメリカも権力者が高齢者ばかりでネガティブに報道されがちだが、高齢でも活躍しているって実はすごいことなのでは
自分は普通のサラリーマンだから60代になったら定年と思い込んでいるが、70代でも80代でも活躍できるのはすばらしいことなんじゃないかなーなんて
Y)私がいま働いている弁護士事務所で一番高齢の弁護士も70代
その人に言わせると日本の定年制は年齢差別だとか
そういう感覚は日本にいたころは無かった

Y)そうはいってもトランプの周りの報道官とかは若い
バイデンが副大統領候補にえらんだカマラ・ハリスも女性で若い人
アメリカは若いころからリーダーシップを発揮して目立つ人が政治家になるみたい
大統領はすごい存在、自分もなりたいっていう感覚があるのかな
日本にはそういうのが無いよね
私)アメリカはビジネスの世界にいたトランプや俳優だったレーガンが大統領になれるというのも国民の感覚に影響しているのかも
日本は当選回数が多いとか閣僚経験がある政治のプロが総理大臣になる
Y)総理大臣だと国民が選べないしね
あとアメリカと違って日本には国民が二分されるような問題(銃規制とか)が無いのもあるのかな

 

☆☆☆

 

11月のアメリカ大統領選を前にして図らずも時事問題・政治問題を扱うハイレベルっぽい読書会になってしまいました。
いや全然ハイレベルじゃないんだけど。
合間合間にコロナいつ収束するの~とか世間話してるふつーの雑談の会だったんだけど。
でも読書会としての概要のみ文字でまとめるとこういう形になっちゃいました。うへ。
この反省を生かして次回はみんなゆるい本を持ち寄ろうということになりました。

みなさん全然こわくないですからねこの読書会!
取って食われたりしませんからね!

読書会のFAQ

ときどき本が好きそうな人をこの読書会に誘っているのですが、意外と読書会というものが知られていないらしく一から説明することが多いので、ここで改めて読書会についての一般的な説明、およびこの「洋書を読む読書会」のことについて、FAQのかたちで簡単にまとめておこうと思います。

 

Q.読書会ってなに?誰かが声出して読むのをみんなで聞くの?

A.それは読書会というよりも、「朗読会」と言われることが多いと思います。
 読書会とは、事前に読んできた本を持ち寄ってその紹介をしたり感想を言い合ったりする集まりのことを指すようです(当社調べ)。

 

Q.本なら何を持ってきてもいいの?

A.ひとくちに読書会といってもいろんなスタイルがあるようです。
・課題図書をひとつ決めてみんなが事前に読んでくるもの
・回ごとに決めたテーマにもとづいて各自が選んだ本を持ってくるもの
・特に制限なしに最近読んだ本や紹介したい本を持ってくるもの
 いちばん上は事前に同じ本を読んでくる必要があってハードルが高い分、深い議論ができそうです。
 下に行くにつれてハードルが低くなり、議論を深めるというより本を題材にしておしゃべりを楽しむような会になってくると思います。

 

Q.この「洋書の読書会」ってなんだか難しそうだけど何するの?英語でしゃべるの?

A.最近読んだ英語のコンテンツ(洋書のほかに英語のネット記事、動画などもOK)を紹介し、そこから雑談を膨らませていくようなゆるい会でございます。
 しゃべる言葉は日本語です。そもそも私自身ぜんぜんしゃべれませんし。

 

Q.この「洋書の読書会」の目的は?

A.主宰者の私としては、もともと好きな「洋書を読むこと」へのモチベーションを維持するためにやっています。
 他のみなさんが参加している目的は人それぞれでしょうが、私としては、洋書を題材にしてみんなで楽しく雑談できたらうれしいなぁと思っています。
 あとはいろんな人のいろんな話を聞いて刺激を受けられるっていうのもメリットでしょうかね。

 

Q.この「洋書の読書会」、オンラインでやっていると聞いたけど具体的にはどんな風に進行するの?

A.まず日時をみなさんに聞いて都合の良い時間帯に決定します。だいたい日本時間で金曜の夜にやっています(海外からの参加も受け付けております)。
 開催日の一週間くらい前までに、各自が紹介するコンテンツについて簡単に紹介する文章を送り、当日はどういう話を展開したいかを大まかに共有しておきます。
 当日、定刻になったらアプリ(ZoomとかLINEとか)を起動します。始まったら順番に持ってきたコンテンツを紹介し、そこから10~15分程度その内容に関連した時事ネタ、自分自身の体験談などをあれこれおしゃべりします。

。。。

簡単にまとめる、とはじめに書きましたがけっこう長くなってしまいました。
コンパクトに説明するって難しいね!
これでもかな~りはしょっているので、個々の話題については過去の記事も合わせてお読みいただければと思います。

・私が読書会を始めたわけ
読書会を始めた趣意ですとか - 洋書を読む読書会

・読書会のスタイルを今の形にした経緯
1回目の結果(2回目以降について話し合った結果) - 洋書を読む読書会

・オンラインでの読書会に切り替えた経緯
読書会をオンラインでやってみるの巻。 - 洋書を読む読書会

2回目の結果(A Supposedly Fun Thing I’ll Never Do Again, Becoming, how the west can adapt a rising asia, The Happiness Project)

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第2回の概要

日時 日本時間で8/28(金)夜
場所 LINEを使ってオンライン開催
参加者 4名

 

前回の記事に書いたとおり、メンバーはあらかじめ
「①自分が紹介する本・動画の概要」
「②それをきっかけに話したい話題」
を共有しました。

そうすると選書の傾向からアメリカに関する話題が中心になりそうなことが分かってきました。

 

この先の文章を理解しやすくするために、まず参加者4名のプロフィールを紹介しておきます。
・私 前回に引き続き参加。ヨーロッパやアジアに旅行したことはあるがアメリ渡航歴はない。
・Yさん 今回から参加。現在アメリカ在住。
・Aさん 前回に引き続き参加。かつてアメリカの大学に留学していた。
・Oさん 前回に引き続き参加。複数の国に住んだ経験があるがアメリカ在住歴はない。

 

こういうメンバーですし、たまたま(洋書だから当然?)アメリカに関する本が続いたので、YさんとAさんを中心に会は進んでいきました。

それではその詳しい内容をどうぞー。

 

☆☆☆

 

1.私の持参本「A Supposedly Fun Thing I’ll Never Do Again」(写真上)

①本の概要

大作「インフィニット・ジェスト」で有名なアメリカ人作家、デイヴィッド・フォスター・ウォレスによるエッセイ集。

幼少期にジュニアテニスの選手だったウォレスはテニスを扱ったエッセイが多く、日本でも本書や他の本からテニス関係の文章を集めた独自のアンソロジーとして「フェデラーの一瞬」が今年2月に翻訳出版されている。(写真に写っているとおりさっそく買いました)

本書にはテニスのこと(例えば全米ツアーのルポとか)以外にもカリブ海のクルーズ船ツアーとかイリノイ州のステートフェアとかデイヴィッド・リンチの撮影同行記から始まるハリウッド映画論とか、アメリカ人にとって身近な娯楽にまつわるエッセイが主に収められている。(「主に」というのは、それ以外にも現代作家によるエッセイらしく文学評論のような文章もあるからなんですが、それらは私の読解力では歯が立たないので私の中では存在しないことになっています。)

 

②やりとり

私)フェデラーと言えばYさん去年の全米オープン見に行ってたけど、そんな簡単にチケット取れるもんなの?

Y)チケットは意外と取れる
なんなら当日券でも買える
私が見たのはまさにフェデラーが出た試合で、相手はロシアの選手だったと思う(注:たぶんグリゴール・ディミトロフ戦)

 

私)この本を読んでるとアメリカ人とか向こうの人は本当に皮肉というかブラックジョークが好きなんだなと思う
以前に日本語のできるイギリス人を伊勢神宮に案内したことがあったが、日本語でしゃべっているとすごく紳士的なのにときどき英語でぽろっとドギツいことを言っていたことを思い出した。

Y)皮肉が分かるくらいのリスニング力が欲しい
ただ、自分がアメリカ人と話していても、相手にとって自分は外国人なので遠慮されているのか本音も皮肉も言ってもらえないなー、と思うことがある

A)自分はアメリカで大学生活を過ごしていたから、学生同士ではけっこうキツいジョークが飛び交っていた
自分も、日本語では言えないようなジョークでも英語だと言えた
今では日本語オンリーの生活だからそんなのもすっかり言えなくなったけど

 

2.Yさん持参本「Becoming」(写真左下)

①本の概要

オバマ前大統領夫人のミシェル・オバマによる回想録。
日本では「マイ・ストーリー」のタイトルで翻訳されている。 

②やりとり

Y)ハーバードに遊びに行ったときに安くなっていたので買ったが1年くらい放置していた
この読書会を機に読み始めた
読み進めたのはまだ半分くらい
結婚して子供がうまれたところまで

 

Y)なかなか分厚い本で、よくこんなに自分のことを語れるなってびっくりした
いま弁護士事務所で働いているんだけど、こっちの弁護士に一個質問するとすごい量の返事が返ってくる
しかも日本人みたいに箇条書きとかじゃなく切れ目のない塊で
ミシェルももともと弁護士だっただからこれくらい書けるのかなと思った

 

Y)いまBLMが盛んに言われているけど、自分の住んでいる近所でも、警官が催涙ガスをまいて、マスクでガスを防いでいる黒人のマスクを剥がして吸わせようとするという事件があった
そんな国なので黒人は小さい時から警察への接し方を学ぶらしい
(ヒゲはちゃんと剃るとかラッパーみたいな恰好をしないとか)
この本でも、大学の寮でミシェルと同室になった友人の母が、ミシェルが黒人だから部屋を分けてくれと言ってきたというエピソードが紹介されている

A)黒人のほかにアジア人にもヒスパニックにも差別はある
ただ、アジア人は数が少なくて抗議の声も小さい
自分はアメリカ留学時にレストランで働いていたが、表で働くのは白人と黒人、裏で働いているのはアジア人とヒスパニックと明確に分かれていた
白人のウェイトレスはチップですごく稼ぎ、アジア人たちはそれを少しだけ分けてもらうという状況だった

  

3.Oさんの紹介動画「how the west can adapt a rising asia

①動画の概要
ご覧のとおりTEDのプレゼン。
内容をざっくり言うと「アメリカ人から見て中国やインドは脅威であり、それにどうアメリカが適応していくかの提言」

もう少し詳しく説明すると次のような感じ
・歴史的に見てこの200年間は例外的に中国やインドが落ちぶれていたがこれから盛り返してくる、欧米はそれにどう対処するか
・これまで欧米はロジカルシンキングを鍛えて技術革新や社会の仕組みづくりをしてきた
・しかしアジアが台頭してきたいま欧米はそれに学ばず、あたふたするだけ
・ではどうすべきなのか?適応のための具体的な提言は「不干渉」と「国際協調」の2つである

 

②やりとり

O)さっき人種の話が出てきたが、白人から見て違う人種が台頭してきたことで彼らは戸惑っている
これを欧米は排除するのか、それともアジアに学んでいくのか、注目したい

Y)トランプ大統領が出てきたのは、黒人のオバマが8年間も大統領をやっていたのに差別の解消に手を付けられなかったという問題の根の深さを表していると思う
色んな人種が流れ込んできていて、それでもこの国は変われない
ここに来るまではアメリカってすごい国だと思っていたし、ニューヨークって大都会とか思っていたがそうでもなかった
ニューヨークはもちろんすごいけど少し離れると都会というわけでもなく、密集地帯が延々と続いているという意味では東京の方がすごかった

A)日本は格差が拡大しているとか言っているがアメリカと比べるとそこまで深刻でなく、表現するなら「整った国」といった感じ
人種が多様でない分、解決策もまだ出せるのかなと思う

  

4.Aさん持参本「The Happiness Project」(写真右下)

①本の概要、をすっ飛ばしての②やりとり

A)アメリカ時代に買って読もうと思っていたがずっと読めていなかった
今日の読書会のために読もうと思ったが全然集中できない
どうしたら本に集中できる環境を作れるか

Y)読み始めた最初のところからいきなり難しいことが書かれているとつまづく
勢いを付けるって大事

A)電車の中で読めば集中できると思うんだけど、いまは車の生活なので機会がない
家にいると家事とかスマホとかテレビとかで時間がない

私)自分は部屋にテレビが無いので、そのぶん本を読む時間は多いかもしれない
なんて偉そうなことを言ってみたけどスマホの影響はでかい、こいつのせいで集中できない

 

☆☆☆

 

ご覧のとおり、後半はだいぶ駆け足になっています。

オンラインだと会議室の予約終了までという時間制限がないんですね。そのせいでグダグダな進行にならないようにと初めに終了時間を設定していたのですが、それでも時間調整は少し難しかったです。

次回以降もオンラインでやっていくので、徐々に慣れていきたいと思います。