洋書を読む読書会

オンラインで読書会をしています

8回目の結果(Sweet Bean Paste,外国語として出会う日本語,LION,The Bridge on the Drina)

f:id:nobirunoji:20220213220118j:plain第8回の概要

日時 日本時間で2/9(水)夜
場所 LINEを使ってオンライン開催
参加者 4名

 

今回の読書会はレギュラーメンバー4名全員が参加となりました。
第6回も同じ状況ではあったんだけど、あのときは本の代わりにプレゼン動画を題材にしていたので、読書会としては初めての4人開催になります。
というわけで簡単なメンバー紹介を。

・Lさん(台湾出身で今は日本で働いている。韓国への留学経験もある)
・Yさん(現在アメリカ在住)
・Aさん(アメリカや北欧に留学していた。今回新たな海外滞在歴が明らかに)
・私(ほぼ日本列島から出たことがないよ)

それではさっそく概要に入りまーす。

 

☆☆☆

 

1.私の持参本 Sweet Bean Paste(写真左上)

①本の概要

樹木希林主演で映画化もされた日本の小説「あん」の英訳。
無気力な男が雇われ店長をしているどら焼き屋に「無給でもいいから働かせてほしい」という高齢の女性がやって来た。
彼女のつくるあんこは絶品だが、それには悲しい理由があって…というお話。

 

②やりとり

私)前回紹介したのがイラクの小説で、場面をイメージするのが大変だったので、今回は日本人作家の本にした。
筋書はシンプルだが、ハンセン病患者への差別や強制隔離という重いテーマを扱っている。
恥ずかしながらハンセン病というものをほとんど知らなかったのでこの本をきっかけにいくつか他の本も読んでみた。

 

Y)この本は外国でも評価高いの?

私)米アマゾンだと高評価が多かった。もともと最近の小説ならなんでもいいからと思って評価が高いものを探したので。

Y)無給で働く=自己犠牲ってことだと思って、そこだけ聞いたら日本っぽい話だなと感じたので、外国でも評価されているのは意外だった。

私)ハンセン病患者への差別はどこの国でもあったみたいだし、現代でもコロナが流行りはじめたころは陽性者を非難する声もあったから、そういうところが共感されたのかもしれない。
でも外国でもボランティアはあるよね?

A)アメリカだとキリスト教徒がボランティアに積極的だったと思う。日本でいうボランティアと、クリスチャンが言うボランティアは違う印象。

L)私が韓国にいたときはクリスチャンの韓国人がボランティアに熱心だったし、留学生の私も積極的に活動に誘われた。
日本や台湾ではそういう経験はなかったから、印象に残っている。

 

私)小説の中で「あんこ」の作り方を丁寧に説明しているのだが、英語でも分かりやすかった。
外国人とあんこや和菓子の話題になったことはある?外国人が和菓子を食べたときの感想など知っていたら教えてほしい。

L)台湾にもあんこがある。旧暦の12月には必ずぜんざいを飲むという風習がある。
ただ、台湾の伝統的なお菓子というとパイナップルケーキなどの方が有名で、あまり小豆を使う習慣がない。お餅もあるけど、中身はあんこに限らずフルーツを使っている。
外国に日本のお土産を持っていくなら「白い恋人」みたいな洋菓子の方が多いかな。

 

L)赤飯も台湾にはない。それに比べると日本ではいろんなところで小豆を使う印象。

Y)韓国人から、ようかんは韓国にもあると言われたことがある。私も韓国系スーパーにあんこを買いに行くことがある。

A)アメリカにいたときのルームメイトがモデルをしていて、健康志向から味噌や小豆を食べていたのを覚えている。

 

2.Lさんの持参本「外国語として出会う日本語」(写真右上)

①本の概要

早稲田大学日本語教育の研究をしている著者が、日本語学習者に多い誤用や言語の背景にある文化の違いなどについて紹介する本。
洋書ではありませんが、外国人として日本語を学ぶLさんならではのチョイスということで紹介してもらいました。

 

②やりとり

L)日本語に関する本を探していろいろ読んでいる。この本では、異文化を体験することが日本語教育のレベルアップにもつながる、ということが主張されている。
文法について聞かれてもネイティブとしては感覚で答えちゃうけど、そこをちゃんと外国人にも分かるように説明するように努めることが国際交流につながるのだそう。
あと、外国人は母語に寄せて理解しちゃうから、ちゃんと説明してあげないと誤った文法のまま覚えられてしまう。
文法って毎日みんなに作られているから、なんで外国人はこう間違えるのか、というのをちゃんと分析した方がいい…ということでした。

 

L)外国人の友達から気になる言い間違いを聞いたことはある?

Y)ちょっと違うけど日本語は書き言葉と話し言葉が離れていると聞いたことがある。
だからLさんが「○○だし」みたいな若者っぽいしゃべり方を使いこなしているのはすごい。

L)逆に、自分が英語を話していてネイティブの先生から「その言い方は変」と指摘されたことはある?

Y)日本人は「○○しなければならない」とよく言うから、英語でも have toとかneed toとか shouldとか使いがち。「定年退職したから旅行を楽しまなきゃ」という意味でhave to と言ったら You don’t have to!って返されたとか。

A)周りから見たらすごくキツい人に思われるかも。

Y)「暗くなってきた」は It’s getting darkと訳すのが一般的で、It has gotten darkとかit has become darkとは言わないけど、私としては「暗くなってきた」も「暗くなります」も「暗い」も使い分けたいのに英語でうまく表現できないのが歯がゆい。

 

私)さっきLさんが赤飯(せきはん)のことを「あかめし」と言ったけど、日本語の音読みと訓読みは外国人には理解できないのでは?と思うことがある。
日本人でも豚汁を「ぶたじる」「とんじる」と2種類の読み方をするし。

L)牛タンならぬ「豚タン(とんたん)」という単語を聞いたときは面白かった。中国語は一つの漢字に一つの読みだね。例外はあるけど、90%くらいの漢字は読み方が一つだけのはず。

 

3.Aさんの持参本「LION」(写真左下)

①本の概要

5歳の時にインドで迷子になって家に帰れなくなった男性がオーストラリアで養子として育てられるも、グーグルアースで故郷を見つけだしたという実話をまとめた本。
映画化された「ライオン ~25年目のただいま~」も現在公開中。

 

②やりとり

A)幼い主人公は間違えて電車で遠くまで行ってしまったんだけど、5歳だから親や故郷の名前も正しく言えず、一時は浮浪児みたいになっていたそう。
その後運よく保護されて孤児院に入り、そこからオーストラリアの夫婦に養子にもらわれることになって。だけど故郷に戻りたいから、5歳のころの記憶を忘れないようにずっと思い返していた。
大人になってグーグルアースを使って真剣に探しはじめたんだけど、心当たりのある駅から一駅ずつ周辺の様子を見ていたから1年かかって、それでようやく故郷を探し当ててお母さんに会えた…というところまで読みました(笑)

 

A)5歳の記憶って覚えてる?

私)ぜんぜん覚えてない…と思ったけど、幼稚園に行っていた年齢だから園内の出来事とかは断片的には覚えているかな。

A)小学校1年生くらいのときにお母さんと一緒にインドとアフリカに行ったことがあるんだけど、あんまり覚えていないのが残念。

Y)うちももうすぐ子供が生まれるんだけど、意外と小さいころのことって覚えてるから気を付けないとね。

全員)それはおめでとうございます!

A)日本人の子供がアメリカで生まれたらアメリカ国籍と日本国籍を選べるんだっけ?

Y)18歳でどちらかを選ばなきゃいけないらしいけど、有名人でもない限りそんなこと調べられないから、こっそり二重国籍にできないかな~なんて思ってます。笑

 

4.Yさんの持参本「The Bridge on the Drina」(写真右下)

①本の概要

ボスニアセルビアの間にかかる橋を舞台に400年の歴史を描く歴史小説
ノーベル文学賞を受賞したイヴォ・アンドリッチの代表作。
ドリナの橋」の題で邦訳も出ている。

 

②やりとり

Y)ノーベル賞作家の作品なので表現が多彩で、読むのが難しい。まだ読んでる途中です。

私)なんでそんな難しい本を読んでるの?

Y)いろんな国籍の友達と自分の国の本をお勧めすることになって、セルビア人の友達から紹介された。ちなみに私は夏目漱石の「こころ」を紹介した。

私)どうして「こころ」を?

Y)最近の小説より昔の名作を読みたいというお願いをされたから。
紹介する前に自分でも読んでみたけど、英語の方が簡単だと思った。原文だと明治時代の日本語で書かれているから分かりにくいよね。
Lさんにとっても台湾の古典を読むのは難しい?

L)難しいですね。文法が分かれば読めるんだけど、教科書にはいろんな時代の作品が収録されているから、時代によって文法が違っていて大変。

Y)日本語も、平安時代の言葉が読めないのは分かるけど、なんで明治時代からでさえこんなに変わっちゃってるんだろう。

私)さっきLさんが紹介した本で「文法は毎日みんなに作られている」という話があったけど、若者言葉のような小さな変化でも100年以上積み重なるとここまで変わっちゃうのかもしれないね。

 

☆☆☆

 

いろいろ端折りましたが、だいたいこんな感じでした。
4人で4冊の本を紹介するので効率よく進行できるように司会したつもりが、最初の和菓子の話からさっそく話が盛り上がり脱線していました。
やはり、食べ物の話は盛り上がる…!